んのです。門番に聞いてみると、迂散《うさん》な奴等は見なかったと主張するし、ここではまた店の中に客がおるのに飾窓に奇妙なものを張りつけて行くし――」
「全くそうだ」とアンガスはおとなしく言った、「店で客がお茶を飲んでいたのに。それはそうと僕は事に当ってテキパキと片づけるあなたの常識を賞賛しますな。僕等は後で何かと相談し合ってもよろしい。そしてそやつはまだそう遠くへは行くまいと思う、なぜなら僕が最後に、十分か一五分くらい前に、[#「、」は底本では「。」]飾窓の所に行ったときには、たしかに紙片《かみきれ》は貼ってなかったのだからね。しかしまた、僕等はその言った方向さえわからんのだから、後を追いかける事も出来ない。それで、どうでしょうスミスさん僕の忠告を入れて、この事件を誰れか官辺のものよりは民間の、強力な探偵家の手に委ねてはどうでしょう。実は僕はあなたのあの自動車で行けば一五分くらいで行ける所に私立探偵を開いている非常に聡明な人を知っているのですが。それはフランボーと云うのですが、若い時には、ちょっと嵐のような男ではあったが、今は厳格な人間になっているのです。実際彼の頭脳は金に価《あたい》
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