歩く誰れでもは幻影の歩みがついて来るような気がするのを知ってます。前にあるいは後ろにバタバタという反響がついて来ます、それで、人はその孤独においてほんとに一人ポッチであるという事を信ずる事は不可能です。私はこの反響の影響にはなれておりました。[#「。」は底本では欠落]それでちょっと前まではそれもあまり気にはしませんでしたが、私は岩壁の上をはっていた表徴的なある形を見つけました。私は立ち止まりました。と同時に私の心臓もハタと止まったように思われたのです。私自身の歩みは止みました。が反響は進んで行きました。
「私は前の方へかけ出しました。そしてまた幽霊のような足取もかけ出したように思われました。私は再び立ち止った、そして歩みもまた止みました。が私はそれはやや時が経って止んだという事を誓います。私は質問を発しました。そして私の叫びは答えこられました、けれどもむろん声は私のではありませんでした。
「私はちょうど私の前方の岩の角をまわって来ました。そしてその薄気味の悪い追跡の間中に私は休止したりまたは話したりするのはいつも屈曲した道のその様な角においてである事に気づきました。私の小さな電灯で現さ
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