うと同じように使わんが為めに左右へ執ったのである。
同書の中に、
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期を知るという事は、早き期を知り、遅き期を知り、のがるる期を知り、のがれざる期を知る、一流直通という極意あり、此事《このこと》品々《しなじな》口伝《くでん》なり。
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とあるが、伊藤一刀斎の「間」を云ったものである。事のついでに立廻りの心得二三を書いておくが立廻り役者の出鱈目な立廻りなど少々心得ておくといい。
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二つの足とは太刀一つ打つ内に足は二つ運ぶ物也。太刀乗はずし、つぐも退くも、足は二つの物也。足を継ぐと云う心|是也《これなり》。太刀一つに足一つずつ踏むは居付《いつき》きわまる也。二つと思わば常に歩む足也。
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太刀一つに足一つずつ踏むは居付きわまる也とは、足が居附いて変化に不便という意味である。
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身のなり、顔はうつむかず、余り仰《あお》のかず、胸を出さずして腹を出し、腰をかがめず、膝を固めず、身を真向にしてはたばり広く見する物也。
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武蔵と小次郎との此の試合に就ては、
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