寛永武道鑑
直木三十五
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)濫《みだ》りに
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大事|故《ゆえ》、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)飛込もう[#「もう」は底本では「まう」]とする
−−
一
桜井半兵衛は、門弟に、稽古をつけながら
(何故、助太刀を、このわしが、しなくてはならぬのか?)
と、その理由を、考えていた。烈しく、突出して来る門弟の槍先を――流石に、修練した神経で、反射的に避けながら、声だけは大きく
「とう」
と、懸けはしたが、何時ものような、鋭さが――門弟が
(病気かしら)
と、疑うまでに、無くなっていた。そして、羽目板の所に立ったり、坐ったりしながら、囁合ったり、汗をふいたりしている門弟をみても
(わしの事を噂しているのではないか)
とか
(わしを、非難しているのでは、有るまいかしら)
とか、考えるようになった。そして、そうした疑を、門弟にさえ持つようになった自分の心の卑しさを
(意気地無しが――)
と、自分で、叱りながら――然し、では、何うして
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