ならべてあった。やがて正面の玄関口に廻ってみると、そこには二つの土耳古《トルコ》青色《せいしょく》の植木鉢が両側に控えていた。しばらくして出て来たのは陰気な型《タイプ》のひょろ長い、胡麻塩《ごましお》頭の気の浮かない、給仕頭で、その男のブツブツ云うところによると、サレーダイン公爵はこの頃ずーッと不在であったが、ちょうど今日まもなく戻って来るはずになっており、室内には彼の帰りを迎えそしてまた不意の来客を迎え支度もととのっているとの事だった。そこで例の公爵から貰った名刺を見せて自分が宛名のフランボーだというと給仕頭の羊皮紙色の陰気な顔にも生命《いのち》の浮動がほのみえて、身体《からだ》をブルブル震わせながらもいんぎんな態度でどうか御ゆっくりして行ってくれといった。「御前様はもうほどなくお戻りで御座います」と彼は云った「せっかくお招き申上げた御客様方にわずかのところで会えなかったとあってはさぞ御残念におぼしめすでございましょう。御前様の御※[#「口+云」、第3水準1−14−87]付で簡単な御食事を御前様と御来客様方の分だけいつでも御用意いたしてございますので、旦那様方にもぜひ差上げろと仰せら
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