ワとそよがせ、この不思議な家に触れて巨大な蘆笛のようにピーピーと鳴った。
「やあー!」とフランボーが叫んだ、「とうとうここが目的地か! あれがいわゆる『|蘆が島《リードアイランド》』だな。あれがいわゆる『蘆の家』だな。頬鬚を生やした肥った男は、仙人だったに違いないな」
「まアそんな所かな」と師父ブラウンが言った、「もし彼が仙人だったら、悪い仙人じゃわイ」
こう話しながらも気短かなフランボーは小舟をサラサラそよぐ蘆の中に乗入れていた、そして彼等は細長い奇妙な離れ小島の、珍妙な物さびしい家の傍に立った。
二
家は水を背にして立っているので、こっち側には船着の上り段があるきりだった。玄関は向側《むかうがわ》にあって細長い島の庭を見下《みおろ》している、二人の訪問者は低い檐《やぐら》の下に、ほとんど家の三方を縁どっている小径《こみち》について廻って行ったのである。三方にそれぞれ開かれた窓を通して彼等は同じように細長い明るい部屋をのぞいた。同じように壁にはたくさんの姿見をはめ込んだ板壁がはりめぐらされておった。そして軽食《ランチ》の膳立であろう、甘《うま》そうな品々が
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