では「て」]いるが、サレーダインの黄色い短衣《ちょっき》と白髪頭、アーントネリの赤短衣と白ズボンはぜんまい仕掛の踊人形の色彩のように、夕日の中にきらめいていた。二つの劔《つるぎ》は切尖《きっさき》から※[#「木+覇」、第4水準2−15−85]頭まで、二本のダイヤモンド留針《とめばり》のように光っていた。
ブラウンは一生懸命に走った、彼の短かい足は車輪のように廻った。けれども彼が格闘の場に到着した時はすでに余りに遅くもあり、また余りに早くもあった――橈にもたれてこっちを睨まえつつある家来共の監視の下に、決闘を中止させるには余りに遅く、またその悲惨なる結末を予見するには余りに早かった。なぜといって二人の力量は不思議なほどに互角で、公爵は一種の皮肉的な自信を以て覚えの腕を振いつつあるに対し、アーントネリは殺狂的の用心を以てふるいつつあったからだ。目まぐるしい火花の出そうな激しい手並の内がいつまで経っても優劣をつけがたいので、ブラウンも思わずホット息をついた。その内にはポウルが警官隊を連れて戻って来るに相違ない。それにフランボーが釣から帰って来てくれれば大いに頼みになるのだ。肉体的に云おうな
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