ちこっちからはずしてきてはめてくれる。かみさんはバケツを廊下に持ち出して畳を拭いてくれる。机を真中にすえて、持ってきた書箱《ほんばこ》をわきに置いて、角火鉢に茶器を揃《そろ》えると、それでりっぱな心地のよい書斎ができた。荻生君はちょうど郵便局が閑《ひま》なので、同僚にあとを頼んでやってきて、庭に生《は》えた草などをむしった。清三が学校から退《ひ》けて帰って来た時には、もうあたりはきれいになって、主僧と荻生君とは茶器をまんなかに、さも室の明るくなったのを楽しむというふうに笑って話をしていた。
「これはきれいになりましたな、まるで別の室のようになりましたな」
こう言って清三はにこにこした。
「荻生さんが草を取ってくれたんですよ」
主僧が笑いながら言うと、
「荻生君が? それは気の毒でしたねえ」
「いや、草を取って、庭をきれいにするということは趣味があるものですよ」と荻生君は言った。
そこに餅菓子が竹の皮にはいったまま出してあった。これも荻生君のお土産《みやげ》である。清三は、「これはご馳走《ちそう》ですな」と言いながら、一つ、二つ、三つまでつまんで、むしゃむしゃと食った。弁当腹《べん
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