。湯屋の路地を通ると、今、座敷に出るところかなんかで、にこにこしてやって来たッけ」
「林さんは? ッて聞かなかったか?」
 かたわらから桜井が笑いながら言った。
 清三も笑った。
「Yはどうしたねえ」
 清三は続いて聞いた。
「相変わらずご熱心さ」
「もうエンゲージができたのか」
「当人同士はできてるんだろうけれど、家では両方ともむずかしいという話だ」
「おもしろいことになったものだねえ」と清三は考えて、「YはいったいVのラヴァだったんだろう。それがそういうふうになるとは実際運命というものはわからんねえ」
「Vはどうしたえ」と桜井が小畑に聞く。
「先生、足利に行った」
「会社にでも出たのか」
「なんでも機業会社とかなんとかいうところに出るようになったんだそうだ」
 三人はお代わりの天ぷら蕎麦《そば》を命じた。
「Art の君はどうした?」
 小畑がきいた。
「浦和にいるよ」
「それは知ってるさ。どうしたッて言うのはそういう意味じゃないんだ」
「うむ、そうか――」と清三はうなずいて、「まだ、もとの通りさ」
「加藤も臆病者だからなア」
 と小畑も笑った。
 一本の酒で、三人の顔は赤くなった
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