地のないのをつねに感じた。熊谷から行田、行田から羽生、羽生から弥勒《みろく》とだんだん活気がなくなっていくような気がして、帰りはいつもさびしい思いに包まれながらその長い街道を歩いた。
それに人の種類も顔色も語り合う話もみな違った。同じ金儲《かねもう》けの話にしても、弥勒あたりでは田舎者の吝嗇《けち》くさいことを言っている。小学校の校長さんといえば、よほど立身したように思っている。また校長みずからも鼻を高くしてその地位に満足している。清三は熊谷で会う友だちと行田で語る人々と弥勒で顔を合わせる同僚とをくらべてみぬわけにはいかなかった。かれは今の境遇を考えて、理想が現実に触れてしだいに崩《くず》れていく一種のさびしさとわびしさとを痛切に感じた。
ある日曜日の午前に、かれは小畑と桜井とつれだって、中学校に行ってみた。中学校は町のはずれにあった。二階造りの大きな建物で、木馬と金棒と鞦韆《ぶらんこ》とがあった。運動場には小倉《こくら》の詰襟《つめえり》の洋服を着た寄宿舎にいる生徒がところどころにちらほら歩いているばかり、どの教室もしんとしていた。湯呑所《ゆのみじょ》には例のむずかしい顔をした、
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