て、かい出してもかい出しても出て来るので、困ったちゃねえだ!」などと言った。
 父親は提灯を振りかざして、穴をのぞいてみた。穴の底の赤く濁《にご》った水が提灯にチラチラうつった。
 荻生さんものぞいてみた。
 やがて棺が穴に下ろされる。土塊《つちくれ》のバタバタと棺に当たる音がする。時の間に墓は築かれて小僧の僧衣《ころも》姿が黒くその前に立ったと思うと、例の調子はずれの読経《どきょう》が始まった。暗い闇の中の提灯は、木槿垣《もくげがき》を背にして立った荻生さんの蒼白い顔と父親の禿頭《はげあたま》とそのほかの群れのまるく並んでいるのをかすかに照らした。

       六十四

 一年ほどして、そこに自然石《じねんせき》の石碑が建てられた。表には林清三君之墓、下に辱知有志《じょくちゆうし》と刻《きざ》んであった。荻生さんと郁治《いくじ》とが奔走して建てたので、その醵金者《きょきんしゃ》の中には美穂子も雪子もしげ子もあった。
 一人息子《ひとりむすこ》を失った母親は一時はほとんど生《い》きがいもないようにまで思ったが、しかしそう悔んで嘆いてばかりもいられなかった。かれらは老いてもなお独《ひ
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