をしようとは夢にも思いがけなかった」
荻生さんは菓子の竹皮包みを懐《ふところ》に入れてよく昼寝にここに来たころのことを思い出して、こう心の中に言った。
式がすんで、階段から父親がおりると、そこに寺のかみさんが立っていて、
「このたびはまア……とんでもないことで……それにお悔《くや》みにもまだ上がりもいたしませんで……あいにく宿《やど》で留守《るす》なものですから」
と、きれぎれの挨拶をした。
夜はもう薄ら寒かった。単衣《ひとえ》一枚では肌《はだ》がなんとなくヒヤヒヤする。棺はやがて人足《にんそく》にかつがれて、墓地へと運ばれて行く。
選ばれたのは、畠と寺とを劃《かぎ》った榛《はん》の木に近いところであった。ひょろ長い並木の影が夜の闇の中にかすかにそれと指さされる。垣の外にいたずらにのびた桑の広葉がガサガサと夜風になびく。
穴は型のごとく掘ってあった。赤土と水が出て、あたりは踏《ふ》み立てられぬほど路がわるかった。組合の男はいち早く草履《ぞうり》を踏《ふ》み込んで、買いたての白足袋を散々にしたと言っている。穴掘り男は頭髪《かみのけ》まで赤土だらけにしながら、「どうも水が多くっ
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