いわい通って行くのに会った。
「万歳! 日本帝国万歳」

       六十三

 昼間では葬式の費用がかかるというので、その翌日、夜の十一時にこっそり成願寺《じょうがんじ》に葬ることにした。
 荻生さんは父親をたすけてなにかれと奔走した。町役場にも行けば、桶屋に行って棺をあつらえてもやった。和尚《おしょう》さんは戦地から原杏花《はらきょうか》が帰るのを迎えに東京に行ってあいにく不在《るす》なので、清三が本堂に寄宿しているころ、よく数学を教えてやった小僧さんがお経を読むこととなった。近所の法類からしかるべき導師《どうし》を頼むほどの御布施《おふせ》が出せなかったのである。
 夜は星が聰《さか》しげにかがやいていた。垣には虫の声が雨のように聞こえる。椿の葉には露がおいて、大家《おおや》の高窓からもれたランプの光線がキラキラ光った。木の黒い影と家屋《うち》の黒い影とが重なり合った。
 棺が小路《こうじ》を出るころには、町ではもう起きている家はなかった。組合のものが三人、大家《おおや》のあるじ、それに父親に荻生さんとがあとについた。提灯が一つ造り花も生花もない列をさびしげに照らして、警察の角
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