《かすり》を着た荻生さんの姿があわただしくはいって来たが、ずかずかと医師《いしゃ》と父親との間に割り込んですわって、
「林君! ……林君! もう、とうとうだめでしたか!」
こう言った荻生さんの頬を涙はホロホロと伝った。
母親はまたすすりあげた。
遼陽占領の祭りで、町では先ほどから提灯行列がいくたびとなくにぎやかに通った。どこの家の軒にも鎮守《ちんじゅ》の提灯が並んでつけてあって、国旗が闇にもそれと見える。二三日前から今日占領の祭りをするという広告をあっちこっちに張り出したので、近在からも提灯行列の群れがいく組となくやって来た。荻生さんは危篤《きとく》の報を得て、その国旗と提灯と雑踏《ざっとう》の中を、人を突《つ》き退《の》けるようにして飛んで来た。一時間ほど前には清三はその行列の万歳の声を聞いて、「今日は遼陽占領の祭りだね」と言って、そのにぎやかな声に耳を傾けていた……。
今、またその行列が通る。万歳を唱《とな》える声がにぎやかに聞こえる。やがて暇《いとま》を告げた医師は、ちょうどそこに酸漿《ほおずき》提灯を篠竹《しのたけ》の先につけた一群れの行列が、子供や若者に取り巻かれてわ
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