えた。号外売りの鈴の音は一時間といわずに全国に新しいくわしい報をもたらして行く。どこの家でもその話がくり返される、その激しかった戦いのさまがいろいろに色彩《いろどり》をつけて語り合わされる。太子河《たいしが》の軍橋を焼いて退却した敵将クロパトキンは、第一軍の追撃に会ってまったく包囲されてしまったという虚報《きょほう》さえ一時は信用された。
 全都国旗をもって埋まるという記事があった。人民の万歳の声が宮城の奥まで聞こえたということが書いてあった。夜は提灯行列《ちょうちんぎょうれつ》が日比谷公園から上野公園まで続いて、桜田門《さくらだもん》付近|馬場先門《ばばさきもん》付近はほとんど人で埋めらるるくらいであったという。京橋日本橋の大通りには、数万燭の電燈が昼のように輝きわたって、花電車が通るたびに万歳の声が終夜聞こえたという。
 清三はもう十分に起き上がることができなかった。容体《ようだい》は日一日に悪くなった。昨日は便所からはうようにしてかろうじて床にはいった。でも、その枕もとには、国民新聞と東京朝日新聞とが置かれてあって、やせこけて骨立った手が時々それを取り上げて見る。
 遼陽の占領が
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