してそれを見た。
 関さんはやがて風呂敷包みから、紙に包んだ二つの見舞いの金を出した。一つには金七円、生徒一同よりとしてあった。一つは金五円、下に教員連の名前がずらりと並べて書いてあった。

       六十一

 遼陽の戦争はやがて始まった。国民の心はすべて満州の野に向かって注がれた。深い沈黙の中にかえって無限の期待と無限の不安とが認められる。神経質になった人々の心はちょっとした号外売りの鈴の音にもすぐ驚かされるほどたかぶっていた。そうしている間にも一日は一日とたつ。鞍山站《あんざんてん》から一押《ひとお》しと思った首山堡《しゅざんぽ》が容易に取れない。第一軍も思ったように出ることができない。雨になるか風になるかわからぬうちに、また一日二日と過ぎた。――その不安の情《じょう》が九月一日の首山堡占領の二号活字でたちまちにしてとかれたと思うと、今度は欝積《うっせき》した歓呼の声が遼陽占領の喜ばしい報につれて、すさまじい勢いで日本全国にみなぎりわたった。
 遼陽占領! 遼陽占領! その声はどんなに暗い汚ない巷路《こうじ》にも、どんな深い山奥のあばら家にも、どんなあら海の中の一孤島にも聞こ
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