かえるようにして車に乗せた。「車に乗せてつれて来るのはちとひどかったね」と言った医師《いしゃ》の言葉を思い出して、「医師をよんでは車代がたいへんだから……五円ではあがらないから、私が車に乗せてつれて行ってあげる」と言ったことを悔いた。
 その二里の街道には、やはり旅商人《たびあきんど》が通ったり、機回《はたまわ》りの車が通ったり、自転車が走ったりしていた。尻をまくって赤い腰巻を出して歩いて行く田舎娘もあった。もう秋風が野に立って、背景をつくった森や藁葺《わらぶき》屋根や遠い秩父《ちちぶ》の山々があざやかにはっきり見える。豊熟した稲は涼しい風になびきわたった。
 幌《ほろ》をかけた車はしずかに街道をきしって行った。
 七色の風船玉を売って歩く老爺《おやじ》のまわりには、村の子供がたかっていた。

       六十

 寺の和尚《おしょう》さんが鶏卵《たまご》の折りを持って見舞いに来た。
 和尚さんもしばらく会わぬ間に、こうも衰弱したかとびっくりした。
 わざと戦争の話などをする。
「旅順がどうも取れないですな」
「どうしてこう長びくんでしょう」
「ステッセルも一生懸命だとみえますな。ま
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