浮かんだ。「不幸な友!」という同情の心も起こった。
 あまり咳が出るので、背《せなか》をたたいてやりながら、
「どうもいかんね」
「うむ、治らなくって困る」
 汗が寝衣《わまき》をとおした。
「石川はどうした?」
 と、しばらくしてから、清三がきいた。
「つい、この間、東京から帰って来た」と郁治は言って、「あまり道楽をするものだから、家《うち》でも困って、今度足どめに、いよいよ嫁さんが来るそうだ」
「どこから?」
「なんでも川越の財産家で跡見《あとみ》女学校にいた女だそうだ。容色望《きりょうのぞ》みという条件でさがしたんだから、きっと別嬪《べっぴん》さんに違いないよ」
「先生も変わったね?」
「ほんとうに変わった。雑誌をやってる時分とはまるで違う」
 それから同窓の友だちの話がいろいろ出た。窓からは涼しい風がはいる……。
 翌朝、郁治が眼をさましたころには、清三は階下《した》で父親を手伝って勝手《かって》もとをしていた。いまさらながら、友の衰弱したのを郁治は見た。小畑に聞いたが、これほどとは思わなかった。朝の膳《ぜん》には味噌汁に鶏卵《たまご》が落としてあった。清三は牛乳一合にパンを少
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