はおめでたい」
 と清三がまじめに言うと、
「約束をきめておくなんて、君、つまらぬことだよ」
「どうして?」
「だッて、お互いに弱点が見えたりなんかして、中途でいやになることがないとも限らないからね」
「そんなことはいかんよ、君」
「だッてしかたがないさ、そういう気にならんとも限らんから」
「そんなふまじめなことを言ってはいかんよ、君たちのように前から気心《きごころ》も知れば、お互いの理想も知っているのだから、苦情《くじょう》の起こりっこはありゃしないよ。僕なども同じ仲間だから、君らの幸福なのを心から祈るよ、美穂子さんにも久しく会わないけれど、僕がそう言ったッて言ってくれたまえ」
 いつもの軽い言葉とは聞かれぬほどまじめなので、
「うむ、そう言うよ」と郁治も言った。
 蚊帳《かや》の外のランプに照らされた清三の顔は蒼白《あおじろ》かった。咳《せき》がたえず出た。熱が少し出てきたと言って、枕《まくら》もとに持って来ておいた水で頓服剤《とんぷくざい》を飲んだ。二人の胸には、中学校時代、「行田文学」時代のことが思い出されたが、しかも二人とも何ごとをも語らなかった。郁治の胸にははなやかな将来が
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