師にかかってみるほうがいいんじゃないかね」
母親は心配そうにかれの顔を見た。
学校はやがて始まった。暑中休暇まではまだ半月ほどある。それに七時の授業始めなので、朝が忙しかった。母親は四時には遅くも起きて竃《かまど》の下を焼《た》きつけた。清三は薬瓶と弁当とをかかえて、例の道をてくてくと歩いて通った。一里半の通いなれた路――それにもかれはいちじるしい疲労を覚えるほどその体は弱くなっていた。それに、このごろでは滋養品をなるたけ多く取る必要があるので、毎日牛乳二合、鶏卵を五個、その他肉類をも食《く》った。移転の借金をまだ返さぬのに、毎日こうして少なからざる金がかかるので、かれの財布はつねにからであった。馬車に乗りたくも、そんな余裕はなかった。
五十三
八阪《やさか》神社の祭礼はにぎやかであった。当年は不景気でもあり、国家多事の際でもあるので、山車《だし》も屋台《やたい》もできなかったが、それでも近在から人が出て、紅い半襟や浅黄《あさぎ》の袖口やメリンスの帯などがぞろぞろと町を通った。こういう人たちは、氷店に寄ったり、瓜店《うりみせ》の前で庖丁《ほうちょう》で皮をむいて
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