もらって立ち食いをしたり、よせ切れの集まった呉服屋の前に長い間立ってあれのこれのといじくり回したりした。大きな朱塗《しゅぬり》の獅子は町の若者にかつがれて、家から家へと悪魔をはらって騒がしくねり歩いた。清三が火鉢のそばにいると、そばの小路《こうじ》に、わいしょわいしょという騒がしい懸《か》け声がして、突然獅子がはいって来た。草鞋《わらじ》をはいた若者は、なんの会釈《えしゃく》もなく、そのままずかずかと畳の上にあがって、
「やあ!」
と大きな獅子《しし》の口をあげて、そのまま勝手もとに出て行った。
母親は紙に包んだおひねりを獅子の口に入れた。一人息子《ひとりむすこ》のために、悪魔を払いたまえ! と心に念じながら……。
五十四
母親は二階の床《とこ》の間に、燃《も》ゆるような撫子《なでしこ》と薄紫のあざみとまっ白なおかとらのおと黄《き》いろいこがねおぐるまとを交《ま》ぜて生《い》けた。時には窓のところにじっと立って、夕暮れの雲の色を見ていることもあった。そのやせた後ろ姿を清三は悲しいようなさびしいような心地でじっと見守った。
父親は二階の格子《こうし》を取りはずし
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