ろで、母親と清三とが知人にでっくわして挨拶《あいさつ》しているさまが浮き出すように見える。車の一番上に積まれた紙屑籠《かみくずかご》につめたランプのホヤがキラキラ光る。
長野の手前で、額が落ちかかりそうになったのを清三は直した。母親はにこにことうれしそうな顔色で、いろいろな話をしながら歩いて行く。熊谷から行田に移転した時の話も出る。
「こうして、たいした迷惑を人にもかけずに、昼間引っ越して行かれるのは、みんなお前のおかげだよ」などと言った。長野をはずれようとするところで、向こうから号外売りが景気よく鈴を鳴らして走って来た。清三は呼びとめて一枚買った。竹敷《たけじき》を出た上村艦隊が暴雨のために敵を逸《いっ》して帰着したということが書いてある。車力《しゃりき》は「残念ですなア。敵《かたき》をにがしてしまって……常陸丸《ひたちまる》ではこの近辺《きんぺん》で死んだ人がいくらもあるですぜ。佐間《さま》では三人まであるですぜ」などと話し合った。
ある豪農の塀《へい》の前では、平生引っ越し車などに見なれないので犬がほえた。榛《はん》の並木に沿った小川では、子供が泥だらけになって、さで網で雑魚
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