て来るのも異様に感じられた。かれは自分の初心《しょしん》なことを女に見破られまいとして、心にもない洒落《しゃれ》を言ったり、こうしたところには通人だというふうを見せたりしたが、二階回しの中年の女には、初心な人ということがすぐ知られた。かれはただ酒を飲んだ。
厠《かわや》は階段《はしご》を下りたところにあった。やはり石菖《せきしょう》の鉢《はち》が置いてあったり、釣《つ》り荵《しのぶ》が掛けてあったりした。硝子《がらす》の箱の中に五分心の洋燈《らんぷ》が明るくついて、鼻緒《はなお》の赤い草履《ぞうり》がぬれているのではないがなんとなくしめっていた。便所には大きなりっぱな青い模様の出た瀬戸焼きの便器が据えてある。アルボースの臭《におい》に交《まじ》って臭い臭気《しゅうき》が鼻と目とをうった。
女の室は六畳で、裏二階の奥にある。古い箪笥《たんす》が置いてあった。長火鉢の落としはブリキで、近在でできたやすい鉄瓶がかかっている。そばに一冊女学世界が置いてあるのを清三が手に取って見ると、去年の六月に発行したものであった。「こんなものを読むのかえ、感心だねえ」と言うと、女はにッと笑ってみせた。そ
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