五六軒しかない貸座敷はやがてつきた。一番最後の少し奥に引っ込んだ石菖《せきしょう》の鉢《はち》の格子《こうし》のそばに置いてある家には、いかにも土百姓の娘らしい丸く肥った女が白粉をごてごてと不器用《ぶきよう》にぬりつけて二三人並んでいた。その家から五六軒|藁葺《わらぶき》の庇《ひさし》の低い人家が続いて、やがて暗い畠になる。清三はそこまで行って引き返した。見て通ったいろいろな女が眼に浮かんで、上がるならあの女かあの女だと思う。けれど一方ではどうしても上がられるような気がしない。初心《しょしん》なかれにはいくたび決心しても、いくたび自分の臆病なのをののしってみてもどうも思いきって上がられない。で、今度は通りのまん中を自分はひやかしに来た客ではないというようにわざと大跨《おおまた》に歩いて通った。そのくせ、気にいった女のいる張《は》り見世《みせ》の前は注意した。
 河岸《かし》の渡し場のところに来て、かれはしばらく立っていた。月が美しく埠頭《ふとう》にくだけて、今着いた船からぞろぞろと人が上がった。いっそ渡《わた》しを渡って帰ろうかとも思ってみた。けれどこのまま帰るのは――目的をはた
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