だ、ばか!」
と言ったがだめだった。
月は互いに争うこの一群をあきらかに照らした。女のキャッキャッと騒ぐ声があたりにひびいて聞こえた。
「ヤア、学校の先生があまっちょにいじめられている!」と言って笑って通って行くものもあった。樽拍子《たるびょうし》の音が唄につれて、ますます景気づいて来た。
三十一
秋季皇霊祭の翌日は日曜で、休暇が二日続いた。大祭の日は朝から天気がよかった。清三はその日大越の老訓導の家に遊びに行って、ビールのご馳走になった。帰途についたのはもう四時を過ぎておった。
古い汚ない廂《ひさし》の低い弥勒《みろく》ともいくらも違わぬような町並みの前には、羽生通いの乗合馬車が夕日を帯びて今着いたばかりの客をおろしていた。ラムネを並べた汚ない休み茶屋の隣には馬具や鋤《すき》などを売る古い大きな家があった。野に出ると赤蜻蛉《あかとんぼ》が群れをなして飛んでいた。
利根川の土手はここからもうすぐである。二三町ぐらいしか離れていない。清三はふとあることを思いついて、細い道を右に折れて、土手のほうに向かった。明日は日曜である。行田に行く用事がないでもないが、行か
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