かな風にあがるのが見えた。機回《はたまわ》りの車やつかれた旅客などがおりおり通った。
 ある夜、学校の前の半鐘が激しく鳴った。竹藪の向こうに出て見ると、空がぼんやり赤くなっている。やがてその火事は手古林《てこばやし》であったことがわかった。翌々日の散歩に、ふと気がつくと、清三はその焼けた家屋の前に立っているのを発見した。この間焼けたのはこの家だなとかれは思った。それは村道に接した一軒家で、藁《わら》でかこった小屋|掛《が》けがもうその隅にできていた。焼けあとには灰や焼け残りの柱などが散らばっていて、井戸側の半分焼けた流しもとでは、襷《たすき》をした女がしきりに膳椀《ぜんわん》を洗っている。小屋掛けの中からは村の人が出たりはいったりしている。かれは平和な田舎に忽然《こつねん》として起こった事件を考えながら歩いた。一夜の不意のできごとのために、一家の運命に大きな頓座《とんざ》を来たすべきことなどをも思いやらぬわけにはいかなかった。金銭のとうとい田舎では新たに一軒の家屋を建てるためにもある個人の一生を激しい労働についやさねばならぬのである。かれはただただ功名に熱し学問に熱していた熊谷や行田の
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