ってみたことがある。見世物、露店《ろてん》――鰐口《わにぐち》の音がたえず聞こえた。ことに、手習《てなら》いが上手になるようにと親がよく子供をつれて行くので、その日は毎年学校が休みになる。午後清三が宿直室で手紙を書いていると、参詣に行った生徒が二組三組寄って行った。

       二十九

 発戸《ほっと》には機屋《はたや》がたくさんあった。市《いち》ごとに百|反《たん》以上町に持って出る家がすくなくとも七八軒はある。もちろん機屋といっても軒をつらねて部落をなしているわけではない。ちょっと見ると、普通の農家とはあまり違っていない。蠶豆《そらまめ》、莢豌豆《さやえんどう》の畑がまわりを取り巻いていて、夏は茄子《なすび》や胡瓜《きゅうり》がそこら一面にできる。玉蜀黍《とうもろこし》の広葉《ひろば》もガサガサと風になびく。
 けれど家の中にはいると、様子がだいぶ違う、藍瓶《あいがめ》が幾つとなく入り口の向こうにあって、そこに染工職人がせっせと糸を染めている。白い糸が山のように積んであると、そのそばで雇《やと》い人《にん》がしきりにそれを選《え》り分けている。反物《たんもの》を入れる大きな戸
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