余儀なき依頼で、高等の生徒に英語を教えてやったのが始まりで、だんだんナショナルの一や二を持って教《おそ》わりに来るものが多くなって、のちには、こう閑《ひま》をつぶされてはならないと思いながら、夜はたいてい宿直室に生徒が集まるようになった。
二月の末には梅が咲き初《そ》めた。障子をあけると、竹藪《たけやぶ》の中に花が見えて、風につれていい匂いがする。
一日《あるひ》、かれは机に向かって、
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鄙《ひな》はさびしきこの里に
さきて出《い》でにし白梅や、
一|枝《え》いだきてただ一人
低くしらぶる春の歌、
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と歌って、それを手帳に書いた。淋しい思いが脈々として胸に上《のぼ》った。ふとそばに古い中学世界に梅の絵に鄙少女《ひなおとめ》を描いた絵葉書のあるのを発見した。かれはそれを手に取ってその歌を書いて、「都を知らぬ鄙少女」と署《しょ》して、さてそれを浦和の美穂子のもとに送ろうと思った。けれど監督の厳重な寄宿舎のことを思ってよした。ふと美穂子の姉にいく子というのがあって、音楽が好きで、その身も二三度手紙をやり取りしたことがあるのを思い出し
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