にうとく暮らした。
 毎日四時過ぎになると、前の銭湯の板木《はんぎ》の音が、静かな寒い茅葺《かやぶき》屋根の多い田舎の街道に響いた。
 羽生の和尚《おしょう》さんと酒を飲んで、
「どうです、一つ社会を風靡《ふうび》するようなことをやろうじゃありませんか。なんでもいいですから」
 こんなことを言うかと思うと、「自分はどんな事業をするにしても、社会の改良でも思想界の救済でも、それは何をするにしても、人間として生きている上は生きられるだけの物質は得なければならない。そしてそれはなるべく自分が社会につくした仕事の報酬として受けたいと自分は思う。それには自分は小学校の教員からだんだん進んで中学程度の教員になろうか。それとも自分はこの高き美しき小学教員の生涯を以て満足しようか」などと考えることもある。一方には多くの友だちのようにはなばなしく世の中に出て行きたいとは思うが、また一方では小学教員を尊《たっと》い神聖なものにして、少年少女の無邪気な伴侶《はんりょ》として一生を送るほうが理想的な生活だとも思った。友に離れ、恋に離れ、社会に離れて、わざとこの孤独な生活に生きようというような反抗的な考えも起こ
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