………………へこ帯
14.5…………………………下駄
―――
4,07.5
[#ここで横書き終わり]
[#ここで字下げ終わり]
これに前の七十銭五厘を加えて総計四円七十八銭也と書いて、そしてこの金をつくるについて、父母《ちちはは》の苦心したことを思い出した。わずか一円の金すら容易にできない家庭の憐《あわれ》むべきをつくづく味気《あじき》なく思った。
夜着《よぎ》の襟《えり》は汚《よご》れていた。旅のゆるやかな悲哀《ひあい》がスウイトな涙を誘《さそ》った。かれはいつかかすかに鼾《いびき》をたてていた。
翌日は学校の予算表の筆記を頼まれて、役場で一日を暮らした。それがすんでから、父母に手紙を書いて出した。
夕暮れに校長の家から使いがある。
校長の家は遠くはなかった。麦の青い畑《はた》のところどころに黄いろい菜の花の一畦《いっけい》が交った。茅葺《かやぶき》屋根の一軒|立《だ》ちではあるが、つくりはすべて百姓家の構《かま》えで、広い入り口、六畳と八畳と続いた室《へや》の前に小さな庭があるばかりで、細君のだらしのない姿も、子供の泣き顔も、茶の間の長火鉢も畳の汚《よご》れて破れたの
前へ
次へ
全349ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング