の心はよくわかった。
けれど、「あんなおしゃらくは嫌ひだ」は少しひどすぎたりと思ふ。あの背《せい》の高い後ろ姿のいいところが気に入る人もあるよ。またあの背の高いお嫌ひな人が君でなくってはならなかったらどうする。
「嫌ひだ」と言うたからとて、さうかほんたうに嫌ひだったのかと新事実を発見したほどに思ふやうな僕にては無之候《これなくそうろう》。かう申せばまた誤解呼《ごかいよば》はりをするかもしれねど、簡単に誤解呼はりをする以上の事実があるのを僕は確《たし》かな人から聞いたの故《ゆえ》だめに候。
この次の日曜には、行田からいま一|息《いき》車《くるま》を飛ばしてやって来たまへ。この間、白滝《しらたき》の君に会ったら、「林さん、お変りなくって?」と聞いていた。また例の蕎麦《そば》屋でビールでも飲んで語らうぢゃないか。小島からこの間便りがあった。このごろに杉山がまた東京の早稲田《わせだ》に出て行くさうだ。歌を難有う。思はんやさはいへそぞろむさし野に七里を北へ下野《しもつけ》の山、七里を北といへば足利《あしかが》ではないか。君の故郷ぢゃないか。いつか聞いた君のフアストラヴの追憶《おもいで》ではないか
前へ 次へ
全349ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング