に、寒そうにコオロギが鳴いていた。
 秋は日に日に寒くなった。行田からは袷《あわせ》と足袋とを届けて来る。

       二十二

 小畑から来た手紙の一。
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今日、ある人(しひて名を除《のぞ》く)から聞けば、君と加藤の姉との間には多少の意義があるとのことに候ふが、それはほんたうか如何《いかに》、お知らせくだされたく候《そうろう》。
先日、加藤に会ひし時、それとなく聞きしに、そんなことは知らぬと申し候。けれどこれは兄《あに》が知らぬからとて、事実無根とは断言出来|難《がた》しなど笑ひ申し候。君にも似合はぬ仕事かな。ある事はありてよし、なきことはなくてよし。一|臂《ぴ》の力を借《か》さぬでもないのに、なんとか返事ありたく候。
加藤の浮かれ加減《かげん》はお話にもならず、手紙が浦和から来たとて、その一節を写してみてくれろといふ始末、存外熱くなりておれることと存じ候。
秋寒し、近況|如何《いか》。
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 手紙の二。
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お返事|難有《ありがと》う。
そんなことをしていられるかどうか考えてみよとのご反問の手厳《てきび》しさ。君
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