ゆえ、一二年は続けたいが、どうも費用がかさんで、印刷所に借金ができるようでも困るからという。郁治はどうせそんな片々《へんぺん》たるものを出したって、要するに道楽に過ぎんのだからやめてしまうほうが結局いいしかただと賛成する。清三はせっかく四号までだしたのだから、いま少し熱心に会員を募《つの》ったり寄付をしてもらったりしたならば、続刊の計画がたつだろうと言ってみたがだめだった。日曜日には荻生君が熊谷から来るのを待ち受けて、いっしょに羽生へ帰って来た。荻生さんは心配のなさそうな顔をしておもしろい話をしながら歩いた。途中で、テバナをかんで見せた。それがいかにも巧みなので、清三は体《からだ》をくずして笑った。清三は荻生さんの無邪気でのんきなのがうらやましかった。
朝霧の深い朝もあった。野は秋ようやく逝《ゆ》かんとしてまた暑きこと一二日、柿赤く、蜜柑《みかん》青しと、日記に書いた日もあった。秋雨《あきさめ》はしだいに冷やかに、漆《うるし》のあかく色づいたのが裏の林に見えて、前の銀杏《いちょう》の実は葉とともにしきりに落ちた。掃《は》いても掃いても黄いろい銀杏の葉は散って積もる。清三は幼いころ故郷
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