日一度に来る。夜、善綱氏《ぜんこうし》(小僧)に算術教ふ。エノックアーデン二十|頁《ページ》のところまで進む。このごろ日脚《ひあし》西に入り易く、四時過ぎに学校を出《い》で、五時半に羽生に着けば日まったく暮る。夜、九時、湯に行く。秋の夜の御堂《みどう》に友の涙《なみだ》冷《ひや》やかなり。
二日。晴。
馴《な》れし木犀《もくせい》の香やうやく衰へ、裏の栗林に百舌鳥《もず》なきしきる。今日より九時始業、米ずしより夜油を買ふ。
三日。
モロコシ畑の夕日に群れて飛ぶあきつ赤し、熊谷の小畑《おばた》に手紙出す、夕波の絵かきそへて。
四日。晴。
久しく晴れたる空は夜に入りて雨となりぬ。裏の林に、秋雨《あきさめ》の木《こ》の葉うつ音しずか。故郷の夢見る。
五日。土曜日。
雨をつきて行田に帰る。
六日。
一日を楽しき家庭に暮らす。小畑と小島に手紙出す。夜、細雨《さいう》静かなり。
七日。
朝早く行く。稲、黄いろく色づき、野の朝の雨|斜《ななめ》なり。夜は学校にとまる。
八日。
雨はげしく井戸端の柳の糸乱る。今宵も学校にとまる。
九日。
早く帰る。秋雨やうやく晴れて、夕方の雲風に動くこと早く夕日|金色
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