、君」
「でも、今日夏帽子を買うから」
「買うまでかぶっていたまえ、おかしいよ」
「なアに、すぐそこで買うから」
「足元を見られて高く売りつけられるよ」
「なアに大丈夫だ」
で、日のカンカン照りつける町の通りを清三は帽子もかぶらずに歩いた。通りに硝子《がらす》戸をあけ放した西洋雑貨商があって、毛糸や麦稈《むぎわら》帽子が並べてある。
清三は麦稈帽子をいくつか出させて見せてもらった。十六というのがちょうどかれの頭に合った。一円九十銭というのを六十銭に負けさせて買った。町の通りに新しい麦稈帽子がきわだって日にかがやいた。
十七
美穂子は暑中休暇で帰って来た。
その家へ行く路には夏草が深く茂っていた。里川の水は碧《あお》くみなぎって流れている。蘆《あし》の緑葉《みどりば》に日影がさした。
家の入り口には、肌襦袢《はだじゅばん》や腰巻や浴衣《ゆかた》が物干竿《ものほしざお》に干しつらねてある。郁治は清三とつれだって行った。
美穂子は白絣《しろがすり》を着ていた。帯は白茶と鴬茶《うぐいすちゃ》の腹合わせをしていた。顔は少し肥えて、頬のあたりがふっくりと肉づいた。髪は
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