い金儲《かねもう》けを考えたもんだ」と前の地主に話していた。
「どうです、林さんに一つ案内してもらおうじゃありませんか。ちょうど昼時分で、腹も空《す》いている……」
 校長はこう言って同僚を誘った。みんな賛成した。
 上町《かみまち》の鶴の湯はにぎやかであった。赤いメリンスの帯をしめた田舎娘が出たりはいったりした。あっちこっちから贈《おく》ったビラ[#「ビラ」に傍点]がいっぱいに下げてあって、貞《てい》さんへという大きな字がそこにもここにも見えた。氷見世《こおりみせ》には客が七八人もいて、この家のかみさんが襷《たすき》をかけて、汗をだらだら流して、せっせと氷をかいている。
 先生たちは二階に通った。幸いにして客はまだ多くなかった。近在の婆さんづれが一組、温泉にでも来たつもりで、ゆもじ一つになって、別の室《へや》にごろごろしていた。八畳の広間には、まんなかに浪花節を語る高座《こうざ》ができていて、そこにも紙や布《ぬの》のビラ[#「ビラ」に傍点]がヒラヒラなびいた。室は風通しがよかった。奥の四畳半の畳は汚ないが、青田が見通しになっているので、四人はそこに陣取った。
 一風呂はいって、汗を流
前へ 次へ
全349ページ中124ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング