るように赤く咲いているのが誰の眼にもついた。木には黄楊《つげ》、椎《しい》、檜《ひのき》、花には石竹、朝顔、遊蝶花《ゆうちょうか》、萩《はぎ》、女郎花《おみなえし》などがあった。寺の林には蝉が鳴いた。
「湯屋で、一日遊ぶようなところができたって言うじゃありませんか、林さん、行ってみましたか」校門を出る時、校長はこう言った。
「そうですねえ、広告があっちこっちに張ってありましたねえ、何か浪花節《なにわぶし》があるって言うじゃありませんか」
大島さんも言った。
上町《かみまち》の鶴の湯にそういう催《もよお》しがあるのを清三も聞いて知っていた。夏の間、二階を明けっ放して、一日湯にはいったり昼寝でもしたりして遊んで行かれるようにしてある。氷も菓子も麦酒《びいる》も饂飩《うどん》も売る。ちょっとした昼飯ぐらいは食わせる準備《したく》もできている。浪花節も昼一度夜一度あるという。この二三日|梅雨《つゆ》があがって暑くなったので非常に客があると聞いた。主僧は昨日出かけて半日遊んで来て、
「どうせ、田舎のことだから、ろくなことはできはしないけれど、ちょっと遊びに行くにはいい。貞公《ていこう》、うま
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