見ている。三人は廊下から本堂にはいろうとしたが、階段のところでつまずいて、将棋倒《しょうぎだお》しにころころと折りかさなって倒れた。笑う声が盛んにした。
雑誌記者は槌《つち》をとって木魚をたたいた。ポクポクポクポク、なかなかその調子がいい。和尚さんも原という文学者もそれを見て、「これはうまい、たたいたことがあるとみえるな」と笑った。雑誌記者は木魚をたたきながら、「それはそうとも、これで寺の小僧を三年したんだから」こう言って、トラヤアヤアヤアヤアとお経を読む真似《まね》をした。
「和尚――お経を読まなくっちゃいかんじゃないか」
こんなことを言ってなおしきりに木魚をたたいた。
主僧と原とは如来様《にょらいさま》の前に立ったり、古い位牌《いはい》の前にたたずんだりして、いろいろな話をした。歴代の寺僧の大きな位牌のまんなかに、むずかしい顔をした本寺《ほんじ》中興《ちゅうこう》の僧の木像がすえてあった。それは恐ろしくむき出すような眼をしていた。和尚さんはその僧のことについて語った。本堂を再建《さいこん》したことや、その本堂が先代の時に焼けてしまったことや、この人の弟子に越前の永平寺《えいへ
前へ
次へ
全349ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング