、さらにあざやかにそのさまを眼《め》の前《まえ》に見るような気がした。文壇の大家小家はことごとく雨をついてその葬式について行ったという。雨がザンザン降って、新緑の中に造花生花のさまざまの色彩がさながら絵のような対照《コントラスト》をなしたという。ことに、寺の本堂が狭かったので、中にはいれなかった人々は、蛇《じゃ》の目《め》傘《がさ》や絹張りの蝙蝠傘《こうもりがさ》を雨滴《あまだ》れのビショビショ落ちる庇《ひさし》のところにさしかけて立っていた。読経《どきょう》は長かった。それがすむと形のごとき焼香があって、やがて棺は裏の墓地へと運ばれる。墓地への路には新しい筵《むしろ》が敷きつめられて、そこを白無垢《しろむく》や羽織袴が雨にぬれて往《い》ったり来たりする。小説の某大家は柱によって、悲しそうな顔をしている。生前最も親しかった某画家は羽織を雨にめちゃめちゃにして、あっちこっちと周旋《しゅうせん》して歩いている。「君、実際、感に打たれましたよ。苦労をしぬいて、ようやく得意の境遇になって、これから多少志もとげようという時に当たって何が来たかと思うと、死!」こう若い和尚《おしょう》さんは話した。
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