どとも書いてある。窕子は父親をその松島の中に置いて、いろいろに想像して見たりなどした。
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さもやこまつの
みとり兒の
絶えずまゐるを
きく毎に
人やなくなる涙のみ
我身を海とたゝふとも
海松もよせぬ……
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實際、窕子に取つては、その遠くにある父親と、その周圍に纏つて來てゐる幼い道綱とがその心をたまらなく悲しくさせるのであつた。道綱は今年數へ年の四つの可愛い盛りで、何ぞと言つて呉葉の手から窕子の膝へと凭りかゝつて來るのだつた。兼家のことなどをもよく覺えて、『殿……殿……』などと小さな手で指さしたりなどした。
『まア、此子が……』
兼家が歸る時にいつも口ぐせのやうに言ふ言葉の一つを、それを誰も教へも何もせぬのに、室の隅で玩具を持つて獨あそびをしながら、獨言のやうに眞似てゐるのをきいた時には、窕子はあきれてさう言はずにはゐられなかつた。
『あこは好い子ぢや……今言うたことをもう一度言うて見や……』
『…………』
幼ない道綱はじつと母親の顏を見るやうにした。
『言うて見や……』
『すぐもどる……すぐもどる……きつとぢや……』
『まア、さう言う
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