卿にかたづいてゐらつした方、あの方が一年ほどはよくおたづねになりましたが、昨年おかくれになりましたので、もう何方もお出でになる方がございません。皆な孫、曾孫にあたる方ばかりですから……』
『一體おいくつにおなりでございますか?』
『今年七十五とかになると申してをりました。』
『それではまだそれほどお年を召したと云ふでもございませんね……』
『え、え、まだ、お達者でございますとも。齒などもまだ下の方は半分は殘つてゐらつしやいますから……』
窕子は深く打たれずにはゐられなかつた。面白い話をきいたといふ以上に大きな人生をそこにまざまざと見せられたやうな氣がした。かの女は遠い東國を頭に浮べた。その身も行つて見たいやうな氣もした。
『まア、ね、面白いお話ね……。よくそれでわからずにゐましたことねえ?』
傍できいてゐたかをるも心を動かされたといふやうにして言つた。
『何しろ、武藏野と申しても、その普通旅人などの通るところではなしに、ずつとわきに入つたところださうでございますからねえ!』
若い尼は説明した。
『さういふことが、今でも出來るでせうか。出來たら、こがれ死に死んだり、一緒に死んだり
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