、そのもくもくと漲るやうにわき出してゐる清水を眺めた。
『まア綺麗ねえ!』
『山はこれだから好いのねえ! 私にもその椀貸して?』
 かをるも自分で茶椀をその中に入れて二杯も三杯もつゞけて飮んだ。
『坊のあるじもこれだけは羨しいつて、參る度に申してをります!』
 若い尼は傍から言つた。
『さうでせうね。坊にも清水はあるにはあるけれども、こんなに好いのはございませんもの……』
『本當ね』
 かをるも言つた。
『ですから、夏は始終此方に來てゐたら、さぞ好いだらうなどと申してをるのでございますの』若い尼はこんなことを言つたが、そのまゝ厨の方へと行つて、そこからさつきの里の女が持つて來て置いて行つた黄く熟した甜瓜を五つ六つ持つて來てそこに浸けた。
『すぐ冷えますでのう』
 冷えたら、京のめづらしいお客さまにさし上げようといふのであつた。
 老いた尼は晝前の讀經を小聲で始めた。香の烟が靜かに※[#「風+昜」、第3水準1−94−7]る――をりをり鳴らす鉦が靜かに鳴つた。やつぱり山の中にかくれた優婆塞であるといふ氣が窕子達にもした。
 此方では若い尼と窕子とが歌の話を始め出した。初めに若い尼の方が歌を
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