、四面が全く山で取圍まれたやうになつてゐるのをさもめづらしさうに、あつちへ行つて立つたり此方へ來て立つたりして眺めた。(いつそかういふところに來て靜かに住んでゐたら……)窕子はこんなことを胸に浮べた。
 若い方の尼は、つめたい清水に糖を入れた茶椀などを持つて來て、それをそのめづらしいお客の前に竝べた。
『何にもさし上けるものはございませんけど、この清水だけは、それは冷たうございますから……。室のこほりのやうでございますから』
『おう、つめたい』窕子はぐつとそれを飮み干して、『もう一杯! 今度は糖を入れずに――』
 若い尼はそのまゝそれを持つて向うの方に行つて、山よりのところにもくもくと湧き出してゐる綺麗な清水にその椀を入れて汲んだ。窕子は氣輕に立つてそれを縁のところからのぞくやうにしたが、『そこに湧いてゐるんですね……。まア、何て好いんでせう!』かう言つて、たまらなくなつたといふやうにそこにあつたわら沓をつゝかけてそつちへと行つた。
 若い尼の手から茶椀を取つてそれをまた一口に飮み干した。
『姉者來て見やな……』
 かをるもその聲をきいてそつちへと下りて行つた。二人はやがてそこに立つて
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