ア、あのやうなことを――』
『あの粗朶を賣つて、歸りには洒を買うて來る……それを居爐裏の側で男の子が待つてゐる。さういふ生活もこの身には羨ましい……』
『結局、のんきで好いには好いでせうね!』
『こら、こら! そんなところに行つてはいけません!』ちよつと窕子が眼を離してゐる間に、道綱はずつと向うの方へと行つて崖の上見たいなところで頻りに松蟲か何かを搜してゐるのであつた。
『本當にしやうがないねえ!』
『麿!』
 かをるも呼んだ。
『もう、行つて了ひますよ』
 そしてかれ等は林の中へと路を取つて行くと、やがてその尼寺の屋根が見え出して來た。
 その時、道綱はやつとあとから走つて追ついて來たが左の掌につかんだものをそのまゝそつと少しあけて見せて、
『母者! 母者!これ松蟲ね?』
『どれ?』
 窕子は覗いて見て、『まア、この子が? 本當に松蟲だ!』
『松蟲! 松蟲!』
 と道綱は左の掌を持上げて、そのあたりを飛廻つた。
『待つておいで! 伯母者がよくして上るから――』かをるはつねに用意して持つてゐる紙を胸のあたりから取出して、それを袋のやうにして、『さ! こゝにお入れ!』と言つて、それをそつ
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