からないのです……本當に、何うお禮を申したら好いか……?』
落ちついた登子の言葉には、別れを潔くしようとするやうな努力がはつきりと讀まれた。
『それでは……』
窕子はじつと登子の顏を見つめるやうにして言つた。
『いつまでも此處にはゐられないやうなわけで……』
『では、内裏に……』
『え……』
登子はたゞ點頭いた。それだけでもかなりの努力であるらしかつた。
『…………』
『まア!』とか『それは……』とか窕子は言ひたかつたのだけれども、言葉は口から出て來なかつた。
暫く經つた。
『それで、こゝをお出ましになるのは、いつでございますか?』
窕子はやつと訊いた。
『それが、もう慌たゞしいので……。出來ることなら、もう一夜くらゐ、御身とわかれを惜しみたいなどと思つたのですけれども、それも出來ない……』もはや内裏から迎への車さへ來れば、いつでも出かけて行かなければならないと言ふのであつた。
『まア、そんなに早く……』
『でも、何うせ、行かなければならないものなら、いつそ早く行つて了ふ方が……?』
『…………?』
『これはほんにつまらぬものだけれども、このわびずまひにあなたがよく來て下さつ
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