などと書いてあつたから……』
『それでは、いよいよその時がまゐりましたのでございませうかねえ!』呉葉にしても胸がとゞろかずにはゐられないのであつた。
『兎に角支度をしてお呉れ!』
やつぱり雨が頻りに降つてゐた。今年は何うして雨が降りつゞくのだらう。普通ならば、もはや五月も終りに近く、雲の縫ひ目もところどころ綻びそめ、山の裾なども見えそめ、時に由つては明るい月影が野にも山にもさしわたつて、青空が人の顏にも衣にも、車にも、または騎馬の侍にも、調度掛を携へた大宮人にも、ところどころ崩れた築土にも快よく映るのであるのに、またしても雨、雨、雨。容易に晴れようとはしないのであつた。
窕子だちは別に變つたことを見出さなかつた。此間などとは違つて登子は靜かに落附いて話した。
始めの中は、これはこつちの考へ方が間違つてゐたので、たゞ無聊のまゝにかうして呼ばれたのに過ぎないのではないかといふ風にすら思はれた。
しかしその靜かさは、嵐の中にふくまれてある一つの靜けさであるといふことがやがてわかつて來た。窕子は胸の轟くのを感じた。
『でもね、御身が度々たづねて下すつたので、何んなに慰められて暮したかわ
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