てはめた。泣いても泣いても盡きずに涙が出て來た。
 後には窕子は慰めるのに言葉がなくなつた。
 暫くの間、沈默があたりを領した。
 そこに常葉が高つきに羊羮を入れて運んで來た。
『他の人なら、とてもこんな眞似は出來ないのなれど、御身ゆえ、何も彼もさらけ出して、このやうに泣いて了うた……。他の人が見たら、何うかしたと思ふに違ひない……』登子はさびしく笑つた。
『まア、あまりに心をつかひあそばすな。御心配の時には、いつにてもすぐ參上致しますほどに――』
『さぞ見にくかつたでせうね……』登子は繰返して言つた。
『そんなこと何とも思ひも致しません。誰れだつてさういふ場合には泣かずにはゐられませんもの……』
『さういふて呉れるのはあなたばかりですからね……。本當に力になつて呉れるものなんかないのですから……』
 登子は實際さびしいらしかつた。姉の中宮からもその時以來わるく嫉妬の眼で見られるやうになつたばかりでなく、いろいろな方面からいろいろな壓迫を強く受けた。御門はまた御門で、式部卿の宮が薨去せられてから、一度も登子の姿を見ないので、もしや何か事があつたのではないかと頻りに内意を九條の家へと傳へ
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