ナ、態々《わざ/\》困るやうにして遣るんだ」
非常に酔つて居るものと見える。
「酔客《よつぱらひ》を相手にしたつて、仕方が無えから、よさつせい」
と留める声がする。
暫時《しばし》沈黙《だんまり》。
「だが、重右衛門ナア、貴様も此村で生れた人間ぢや無えか、それだアに、此様《こんな》に皆々《みんな》に爪弾《つまはじき》されて……悪い事べい為て居て、それで寝覚《ねざめ》が好いだか」
と言つたのは、前のとは違つた、稍《やゝ》老人らしい口吻《くちぶり》。
「勝手に爪弾《つまはじき》しやアがれ、この重右衛門様はナ、奴等《うぬら》のやうなものに相手に為《さ》れねえでも……ねつから困らねえだア……べら棒め、根本三之助などと威張りやアがつて元ア、賽銭箱《さいせんばこ》から一文二文盗みやがつたぢやねえだか」
「撲《なぐ》つて了《しま》へ」
と傍《かたはら》から憤怒に堪へぬといふやうな血気の若者の叫喚《さけび》が聞えた。
「撲れ! 撲れ!」
「取占《とつち》めて了へ」
と彼方《あつち》此方《こつち》から声が懸る。
「何だ、撲《なぐ》れ? と。こいつは面白れえだ。この重右衛門を撲るものがあるなら
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