》つて来て、口惜《くや》しくつて/\、忌々《いま/\》しくつて/\、出来るものならば、この天地を引裂《ひつさ》いて、この世の中を闇にして、それで、自分も真逆様《まつさかさま》にその暗い深い穴の中に落ちて行つたなら、何《ど》んなに心地が快《い》いだらうといふやうな浅ましい心が起る。
かういふ時には、譬《たと》へ一銭の銅貨を持つて居らないでも、酒を飲まなければ、何うしても腹の中の虫が承知しない。仕方が無いから、居酒屋に飛んで行つて一杯飲む、二杯飲む。あとは一升、二升。
重右衛門の為めには、女房が出来たのは余り好い事では無かつたが、もし二人の間に早く子供が生れたなら、或は重右衛門のこの腹の虫を全く医《いや》し得たかも知れぬ。けれど不幸にも一年の間に子をつくることが出来なかつた二人の仲は、次第に殺伐《さつばつ》に為《な》り、乱暴に為り、無遠慮になつて、そして、その場句《あげく》には、泣声、尖声《とがりごゑ》を出しての大立廻。それも度重なつては、犬の喧嘩と振向いて見るものなく、女房の顔には殆ど生傷《なまきず》が絶えぬといふやうな寧《むし》ろ浅ましい境遇に陥つて行つた。
その結果として、折角
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