に寂寞《せきばく》たる山中の村はいよ/\しんとして了つて、虫の音と、風の声と、水の流るゝ調べの外には更に何の物音も為《せ》ぬ。
一時間程経つた。
すると、不意に、この音も無くしんとした天地を破つて、銅鑼《どら》を叩いたなら、かういふ厭《いや》な音が為《す》るであらうと思はれる間の抜けたしかも急な鐘の乱打の響!
二人は愕然《ぎよつ》とした。
「又|遣付《やつつ》けた!」
と忌々《いま/\》しさうに叫んで、根本の父は一散に駆けて行つた。
「粂《くめ》さんの家《とこ》だア、粂さんの家だア」
と、誰か向ふの畔《あぜ》を走りながら、叫ぶ者がある。山県はちらと見たが、「あ、僕の家らしい!」と叫んで、そして跣足《はだし》の儘《まゝ》、慌《あわ》てて飛出した。
根本も続いて飛出した。
見ると、月の光に黒く出て居る鎮守の森の陰から、やゝ白けた一通の烟《けむり》が蜃気楼《しんきろう》のやうに勢よく立のぼつて、其中から紅《あか》い火が長い舌を吐いて、家の燃える音がぱち/\と凄《すさま》じく聞える。山際の寺の鐘も続いて烈しく鳴り始めた。
一散に自分も駆け出した。
七
田の畔《く
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